君のスガタ

 一応、心配になったので、話しかけてみることにした。

 ザワザワと店内にいるお客の声が響く中、松永慶先輩は一人の世界にいるようだった。

 私達とは違う世界を見つめて、観察者としているように見えた。

「松永慶先輩…」

 本人に話しかけても目を瞑ったまま、中々起きない。

「松永慶先輩! 松永慶先輩!」

 私は松永慶先輩の肩を叩いて、起こそうとするが、目を開けない。

 もう諦めて、めぐみの近くへ行こうとすると、私の右手首を掴んできた。

「……え?」

「……あっちに行くのか」

 目を開けて私を見てきた。

「起きてたんですか」

「肩揺らされて起きないやついるか」

「なんかいつもと違いますね」

「ああ、人いるからね。人との態度違くてびっくりした?」

 松永慶先輩はニコッと右側だけ口角を上げていたが、相手を睨むように言っていた。

「……別に気にしませんし。態度が変わるからってなにかそんなに気にすることありますか?」

 私は松永先輩が言った言葉は全然気にしなかった。

 むしろ聞かれたことで疑問が沸いた。

 人との態度が変わることで松永慶先輩にとって嫌なことかもしれないと客観的に考えたのだろう。