君のスガタ

 斗真先輩はチェッと優しい舌打ちをして、もう~と言って、先輩達とめぐみは談笑していた。

「柚。楽しいね」

 ソフトドリンクを口につけてから、拝むかのように両手を重ねていた。

「あ、うん。そうだね。めぐみと先輩達が楽しそうならよかった」

 誰にも分からないように息を少し吐いて、めぐみに言う。

「…うん。あ、でも、柚がイヤなら私抜けるからね。ちゃんと言うんだよ」

 めぐみは私の肩にポンッと置き、私の気持ちを聞いてくれた。

「大丈夫? 逆に斗真先輩は初対面だけど、驚かないんだね」

 私は苦笑いを浮かべて、めぐみに聞く。

「大丈夫。斗真先輩悪い人ではなさそうだし。先輩達が楽しんでるしね」

 口角を緩めてからめぐみは私の耳元で囁く。

「そっか」

 私は瞬きを一回して返事をした。

「それより、あの人大丈夫?」

「え? なにが」

 私はめぐみが指をさしている所を見た。

 そこには松永慶先輩がイヤホンを両耳につけ、両手にはズボンのポケットを入れていた。
   
 外から音が漏れる程の音量で目を瞑って聞いていた。

「うーん、大丈夫なのかな」

 私は松永慶先輩を見て、声を発した。