君のスガタ

 私は間を置いて、顔を上げる。

 涙はボロボロと頬に落ちて、私は目尻にあった涙を拭った。

「きよし、私を好きになってくれて、ありがとう。ごめん。私、行くわ」

 両目を擦って、よし! と顔を叩いてから気合を入れた。

 私は一歩を踏み出して、走り出そうとした。

 その時、きよしは私の左手首を掴んだ。

「柚。少しは僕のこと意識してくれた?」

 きよしは涙目で私に訴えてきた。

 ワンワンと犬が私に吠えて、しっぽをふって、喜んでいた。

 今の私の現状みたいで、少し笑ってしまった。飼い主が本当にすいませんと礼をして、謝ってから、私は声を出す。

「…うん。ドキッとした。だけど、私は松永先輩が好きみたい」

 そう言ってから私は走り出していた。

 きよしの顔は見れなかった。

悲しい顔と私が傷つけてしまった罪悪感から見ることはできなかった。

 とにかく走った。

 部活動で何周か走ってはいるし、体育の授業では始まる前にランニングしている。

 体力はある方だと思っていた。

 全速力では走ったことはなかった。

 いつも自分のペース配分を考えて走っていたが、今はその配分さえ考えている暇はない。