君のスガタ

「じゃあ、ピンチヒッターできるか」

 柳暗先生は大股で立ったまま、腕を組んで私に言う。

「はい? え? だって、今レギュラー選手が試合してるじゃないですか」

 私はギャル三人組と一緒にうちわで応援したり、新しいドリンクを持ってくることを一年生に教えているところだった。

「一年生に教えるのあとで俺がやるから。亀本。調子が悪いみたいでほら見てみろよ」

 柳暗先生は試合の様子を指をさして、私はその方向を見た。

 確かに亀本先輩は顔白くて、今でも吐きそうな表情をしていた。

「試合前は体調よかったのに、なんで」

 私は試合の様子を見ながら、柳暗先生に問いかける。

「わかんないが…体調が悪いのは確かだ。阿部。ずっとパスやトス、レシーブも頑張ってたのは俺ら全員知っている。次、交代する時までにスタンバイしておけよ」

 柳暗先生はいつもの怖い表情はどこかに消え去ったのか少し微笑んでいた。

「はい」

 私は返事をして、ユニフォームを柳暗先生に渡されたので着替えて、念願の試合に出る準備は整った。

「阿部。言ってこい」

 柳暗先生は私にエールを送ってから、私は亀本先輩と交代した。

「柚。頑張ってきて」