君のスガタ

「そんな…前に会ったことあるって言い放ってから帰るなんて気になるじゃないですか。教えてください。私達は何なんですか」

 私は松永先輩の手を掴んだまま、瞳の奥を見据える。

 今じゃないと聞けないと瞬時に思った。

 歩道を歩く人々はスマホを弄ってメッセージを見たのか待ち合わせの人に手を振っていた。

 そんな中、私と松永先輩は対峙して、彼の言った意図を聞きたかった。

 聞きたかっただけなのに、私が思っていなかった返答が返ってきた。

「柚。じゃあ、次あるバレーの試合が終わった後、教える。今は教えられない」

 松永先輩は私の手をそっと離して、下に俯いた。そう言って、去っていた。

 私に言い返されないように早口で声を発して今度こそ松永先輩はいなくなった。

「なんなの。こんなのずるいよ」

 私は地面にしゃがりこみ、頭の中で今まであった出来事を思い出そうとした。

 小学校、中学校などの思い出した部分を切り取っても松永先輩らしき者はいない。

 なんで…

 私は頭を抱え込んでから、立ち上がった。

 家に着くと、チェコが出迎えてくれた。

 しっぽを振って舌を出しているチェコを見ると、ホッと胸を撫でおろす。