君のスガタ

 泣きそうになって、俯いている私を松永先輩はさっきより力強く右手を握りしめた。

「柚。柚の手はタコ出来るくらい頑張ってるの知ってる。今回、本音で話してくれたから新たな一面を見れたんだ。俺はそれだけでうれしい」

 松永先輩は私の目を瞬きせずに見て、大丈夫と言ってるかのように手を包んでくれた。

「…っ…ううう」

 私は松永先輩に反論したにも関わらず、優しい言葉が返ってくるとは考えもしなかった。

 逆に、知ってるに決まってんだろと言い返されると思っていた。

「大丈夫、いいんだよ、吐き出して…」

 松永先輩は包み込んだ私の手を握りしめながら、肩をポンッと叩いて優しくポンポンとリズムよく叩いていた。

「……っ……うっうっ」

 私は広い体育館でひたすら泣いた。

 目は赤くなって、鏡を見ると、顔がパンパンだ。

 松永先輩は泣き止むまで肩を叩いてくれた。

「すいません。こんなもの見せて…」

 涙を拭いながら、松永先輩に涙声で言う。

「いや……別にいいよ。今日に限った訳じゃないし」

 松永先輩はズボンのポケットに右手を入れてから下を向いた。

 なにかを思い出しているかのように。