君のスガタ

 優しく力強く柔らかい手だった。

「松永先輩……あの…」

 私は真正面に手を握ってきた松永先輩がいた。その手を私は見つめた。

「俺は、柚は大丈夫だと思うよ。こんなに練習してやれることはやってる。それだけで充分じゃないか」

 静まった体育館の中、松永先輩は今まで頑張ってきたことは試合に生かせると優しく伝えてくれた。

 だけど、練習をしていればレギュラーになれるなんてまやかしだ。

 頑張ったって意味のないことなんてないと思いたい。

でも…意味のないこともあるから、それは去年思い知らされた。

「……松永先輩には分からないですよ。私の気持ちなんて。知ってるつもりになってるだけですよ。話すようになって私のこと知ってる気になってたんですよ。私はやれることはやりますよ。レギュラーに入るために。入れなかったらと考えると考えたくない」

 私は松永先輩に反論した。

 知らないんだよ、私を。

 興味があるとか言っておいて、違うんでしょ。ただ、そう言っている自分が誇らしいとかでしょ。

 私は松永先輩に言っても意味がないのに、松永先輩の言葉に対して、心の中で叫んだ。