君のスガタ

 誰もいなくて、私たちの声が響き渡り、松永先輩と二人でいるのは気まずかった。

 天海祭以来だった。斗真先輩やめぐみもいたので、あまり二人っきりになることはなかった。

「柚。頑張ってんな」

「はい。もう少しで試合あるので」

 私はバレーボールを両手で持ったまま、松永先輩を見つめた。

「…柚。緊張してるんじゃないか」

 松永先輩は一歩踏み出して、私の所まで来た。真顔で鞄を後ろに持ち、言ってくる。

 なんで、そんなに私のこと構うの?

 松永先輩言いましたよね。

 私は綿あめな存在だって。

 フワフワして、触ったらいいのか分からない。けど、触れたくない。

 結局は後輩以上後輩未満なんですよね。

「し、してません。ってか、私レギュラーに入れるか分からないのに緊張よりもどうなるかが気になるんです」

 私は思わず思っていることを口にしてしまった。

 まずいと思って、松永先輩の方に向いていたが、右側の方向を向き直した。

 どういう顔をすればいいのか分からなかったからだ。

 今、多分左右に目を泳がしているに違いない。

 ふぅと息を整えて、あの~と声を出した。

 すると、松永先輩は私の手を握ってきた。