それを見た斗真は心配そうに眉をひそめて、ぼそりと声を発した。

「……そう。でも、柚ちゃん取られないようにしないとね。ほら」

 斗真は下にいる生徒達を見てから、指をさしていた。

 そこを見ると、柚と同級生男子きよしだった。

「本当にそれでいいのね」

 斗真はギロッと俺を睨みながら、低い声で言い放つ。

 これでいいんだ。これで……

 そう思って、拳を握りしめていた。

 その場を立ち尽くしたまま、自分に問いかける。本当にいいのか、俺。

 問いかけても、行動は起こせなかった。

 斗真は俺を少し見た後、どこかに消えていた。

        *

 松永先輩にとって、私はただの綿あめの存在。

 ただの後輩でしかない。

 松永先輩には好きという概念がないのかもしれない。

 私と松永先輩には境界線がある。

 ここまではいいけど、ここからはダメっていうオーラが出ている。

 私はやっぱり松永先輩にとって、何者でもないんだ。

「…どうしよう」

 私は一人でため息をつく。

 なにをしたって、私は松永先輩の視界に入らない。それだけで私はなんでか悲しくなった。

 ただの先輩後輩の関係なのに。