親愛なる魔王の君へ#2~召喚されたので、魔王の側近になります!~

「……どういうこと?」

ルーチェの言葉に首を傾げると、ルーチェは「これ、呪具なんだよね」と説明をしてくれた。

呪具は、触れた者を呪う道具。それは持ち主がいない場合で、持ち主がいる場合は他の人が触れても何も起こらない。呪い耐性の高い人にしか扱えないものだという。

「僕の使ってるこの杖も呪具で、この子……八咫烏は、呪具の力を制御する呪具の化身なんだ」

ルーチェは、机の上に止まっているさっき見た黒い鳥?――八咫烏に触れる。

「この呪具にも、呪具の力を制御する、呪具の化身が存在する……んだけど……」

ルーチェは、そこまで言うと困ったように笑った。

「いない、らしいんだよね」

「……どういうこと?」

僕が首を傾げると、八咫烏は僕に近づく。

『初めまして。ルーチェ・クロウディア様に仕えさせていただいてます、呪具の化身の八咫烏と申します』

えっ、鳥が喋った……?

『確かに、こちらはあなたが持ち主の呪具です。しかし、呪具の力が完全に封じ込まれている……言わば、ただの武器と化している状態です』

「要するに、それは呪具じゃなくてただのアクセサリーだよって言いたいんだよね?」

そんな声が聞こえてきて、僕は声がした方を見た。

そこにいたのは、紫みがかった黒髪に紫の瞳の、ギルバートさんに連れられてやって来た街で出会った男性。