親愛なる魔王の君へ#2~召喚されたので、魔王の側近になります!~

「……ティム?ここは……」

「ここは、ルーチェの家にあるルーチェの部屋だよ」

ティムの返答を聞きながら、僕は体を起こす。

本棚に入り切らなくなったであろう本たちが隅の方で山になっていて、床には何やらいっぱい紙が散らばっている。

その床の真ん中ではペンを左手で握り締めたルーチェが眠っていた。

……そういや、ルーチェって左利きだっけ?……じゃなくって……何で、僕はここにいるんだろう?耳飾りを拾おうとしたところまでは、覚えているんだけど……。

僕が色々と考えていると、ルーチェが体を起こす。どうやら、起きたようだ。

「あ、ルーチェ。おはよう」

「……おはよう……」

起きたばかりなのもあるのか、ルーチェは床に座ったまま、ぼうっとしている。

「…………あ、ラウル……目が覚めたんだ……」

少しの間ぼうっとしていたルーチェは、僕の方を向いた。

「あのさ、ルーチェ」

「分かってるよ。説明が欲しいんだよね?」

ルーチェの問いかけに僕が頷くとほぼ同時に、ドアがノックされる音がする。

ルーチェは一言返事をして、立ち上がるとドアに近づいてドアを開けた。

「ルーチェ、おはよう。ラウル、だっけ?もう起きてる?」

「おはよう。起きてるよ」

「そっか。丁度良かった……ルーチェ、今から会議だ。ティムとラウルと一緒に、父様の部屋まで」

「分かった。準備が出来次第向かうよ」

「ゆっくりで大丈夫だよ。また後で」

そんな会話を誰かとしたルーチェは、僕らの方を向く。

そして、ルーチェは微笑んだ。

「……ラウル、ティム。行こうか……クラル様のもとへ」