親愛なる魔王の君へ#2~召喚されたので、魔王の側近になります!~

「……八咫烏」

ルーチェが左腕を自分の前に出すと、何かの名前を呼ぶ。ルーチェの腕に、1羽の黒い……神鳥?のようなものが止まった。

「ルカさんたちに、モンスターを討伐したことの報告を」

『かしこまりました』

そう一言残し、ルーチェの腕に乗っていた黒い鳥はどこかへと飛んでいく。

……って、さっき鳥が喋らなかった?僕の気のせい?

「あ、そうだ。父様」

鳥が飛んでいったすぐ、ルーチェはくるりと後ろを向いて、ギルバートさんたちがいる方を向いた。

それをぼんやりと見ていた僕は、近くに何かが落ちているのに気づいて、近づく。

それは、何かの耳飾りだった。

小さな水色のひし形の下に、青いタッセルの付いた耳飾りが、一つだけ落ちている。

拾わなきゃ。誰かの落とし物かもしれない。

考えるよりも先に、自然と耳飾りに手が伸びた。本能が、拾わなきゃいけないと言っている。

「……ラウル、待って……それは……」

近くから、ルーチェの困惑したような声が聞こえる。

耳飾りに触れた途端、僕の目の前が真っ暗になった。



「――ル!――ラウル!!」

誰かに名前を呼ばれた気がして、いつの間にか閉じていた瞼を持ち上げる。

見慣れない天井が、目に入った。僕の視界に、白い髪の――ティムの顔が映る。

「……」

僕と目が合って、ティムは安心したように微笑んだ。