親愛なる魔王の君へ＃2～召喚されたので、魔王の側近になります！～

男性の言葉に、僕は「……嫌い、だった……？」と呟いた。

「……聞きたい？俺の弟の話」

口に入れていたおむすびを飲み込んでから、男性は僕の方を見る。僕は、男性の言葉に頷いた。

「分かった……この話、聞きたくなくなったら、遠慮しないで途中で止めてね」

僕が「分かりました」と頷くと、男性は話し始めた。

「……俺にはね、2歳年下の弟がいる。で、俺は小さい頃から大賢者に憧れてたんだ」

……大賢者って、確か、この世界にある資格……称号の1つだっけ。魔導師の1番上の……。

「弟は魔法の才能があって、俺が苦労して覚えた魔法も、俺が練習中の魔法も、いとも簡単に覚えてってさ。そんな弟が羨ましかったし、憎かった。徐々に嫉妬心を抑えられなくなって、弟に当たるようになっちゃって」

男性が、服をぎゅっと掴む。どこか辛そうに話すものだから、僕は男性に話しかけた。

「……あの、話すのが辛いなら無理に話さなくても……大丈夫なら、良いんですが……」

「ははっ、君は優しいなぁ……でも、大丈夫だよ……続けても大丈夫？」

「……はい」

僕の答えを聞いて、男性はまた話し始める。

「……弟をたくさん傷つけたと思うし、弟の周りの人も巻き込んだりもした。けど、弟は俺と向き合って真剣に話をしてくれた。俺の話をちゃんと聞いてくれた。弟は、決して俺を否定したりなんかしなかった。優しい奴だよ。俺の弟は」