親愛なる魔王の君へ#2~召喚されたので、魔王の側近になります!~

「さっき店で買ったおむすびで良かったら、1個食べる?」

そう言って、男性は僕と目を合わせた。

「え?えっと……」

「君、お腹空いたって言ってたじゃん」

……もしかして、さっきの呟き聞かれていた……?

「確かに、そうですけど……帰ってから食べようかと思って……」

僕がそう返すと、男性はおむすびの入っていると思われる袋を開けながら「じゃあ、帰らないの?」と言う。

「……少し休憩してから、帰ろうと思って……僕、この町の住民じゃないんですよね」

「そうなんだ。俺もこの町の住民じゃないし、ここに来るの初めてなんだよね」

そう言って、男性は入っていたおむすびを1個手に取って僕に差し出してきた。

「……気持ちはありがたいんですが、遠慮しときます……」

「そう?なら、いいや」

男性はそう言って、僕に差し出していたおむすびを食べ始める。

「……ねぇ、君。この町に来たことはあるの?」

男性が話しかけてきて、僕は「ないです」と答えた。

「そっか。じゃあ、俺と一緒だ」

そう言う男性の近くには、白に緑の宝石の埋め込まれた長い杖が置かれていて、僕は「その杖」と話しかける。

「ん?あぁ、これ?貰い物なんだ。嫌いだったはずの弟からのね」