親愛なる魔王の君へ＃2～召喚されたので、魔王の側近になります！～

ギルバートさんは、いつも遠くへ行く時はオリバーに送ってもらうらしい。

「大体は見て回ったか」

ギルバートさんの案内で、ウィスタリアをぐるっと見て回った。

ウィスタリアは、そこまで大きな町ではないものの色んな店屋があって暮らしやすそうな町だ。

「ラウル、行きたい場所とかあるか？」

ギルバートさんの言葉に、僕は「色んなお店を見てみたいかな」と答える。

「分かった。家を出る前にも行ったが、昼前には僕は町を出るからな。それ以降も町にいたかったら、1人で回れよ」

ギルバートさんの言葉に、僕は「分かった」と頷いた。



昼になってギルバートさんと別れた僕は、近くにあった長椅子に座って、少し休憩していた。

「……お腹、空いた……」

この世界に来て、まだ1か月。必要なものはギルバートさんが買ってきてくれるから、この世界のお金は一文も持っていないわけで。

それに1か月も家に引きこもっていたからか、体力もなくてもう疲れた。少し休憩してから、帰ってさっさと昼ご飯を食べよう。

なんて考えながら、ぼうっと空を眺めていると隣から「お腹空いたの？」と声がして、僕は声がした方へと顔を向ける。

誰もいなかったはずの長椅子には、いつの間にか誰かが腰をかけていた。

紫みがかった黒髪に、紫色の瞳。白いフードの付いたローブ？マント？のようなものに身を包んだ男性が隣にいる。