私は今まで何をしていたんだろう?
 何も思い出せない……

 私の身体はなぜかふわふわと何も見えない闇に浮かんでいて、消えてしまいそうな気さえする。

 誰もいない。
 自分の声はなぜか出ない、身体は動かない。

 私はきっと、このまま消えて何も残らなくなってしまう……


 そう思ったとき、私の近くにぼんやりとした何かが現れた。

 身体の周りに薄赤色のオーラのようなものをまとっているため分かる、人型。
 頭から膝下までが黒いローブで覆われている。

 誰だろう?
 そんな不安だけが自分を襲う。

 その人型は、私を突然抱きしめた。

 私の不安な心はなぜか、その相手に抱きしめられたことで安心感に変わる。

 フワリと、相手のフードが外れた。
 整った白い顔に、優しげな笑みが浮かんでいる男性。

 ……私を受け入れて、くれる……?


 私の服がはだけていく。

 彼のローブもいつの間にか闇に消えて。

 冷たいけれど落ち着く彼の身体に包まれて、私は不思議な気分と安心感で溶けていく気がした。

「愛しているよ」

 彼の掠れた低い声がそうささやく。

 そして冷たい口づけ。

 私は受け入れられた。
 いや、自分でも受け入れたのだ。

 “自分の死”を。


 私の身体は冷たい土の中。

 でも私の心は、たった“一人”の彼とともに永遠に……