キューピットって、知っている?

 金の弓矢で人を恋に落とし、鉛の弓矢で人の悪い縁をたちきるギリシャ神話の恋の神さまだよ。
 肩から白い翼がはえていて、いたずら好きな男の子のイメージ。
 有名だから、聞いたことぐらいはあるかな。
 じゃあ、そんなキューピット自身の恋の物語を知っている?
 えっ?
 恋の神さまなのに、自分も恋をするのかって?
 うん、そうなの!
 その恋は、当のキューピット自身も想定していない事故からはじまったんだ。
 彼の恋の相手は、プシュケという人間の女の人。
 それはそれは、美しい人だったんだって。
 どのぐらいかというと、キューピットのママが嫉妬しちゃうぐらいに!
 ちなみにママは、美の女神ヴィーナスさまだよ。(貝殻の上で、ウフンなナイスバディをさらしているゴージャスな絵で有名!)
 美の女神さまがキーッ! って怒っちゃうほどの美人さんってすごいよねぇ、想像もつかないや。

「キューピット! お前の力を使って、プシュケを世界一ブサイクな男に恋させなさい!!」

 ママのひどい言いつけどおりに、プシュケのもとへと向かったキューピット。
 ところがどっこい、プシュケに刺すはずの金の弓矢を、まちがえて自分自身に撃っちゃった!?
 そうしてキューピットは、プシュケに恋をしてしまいました。
 これが、恋の神さま自身の恋のはじまり。
 ぶっちゃけ、ちょっと笑っちゃうっていうか、間抜けだよね。

 わたしね、ギリシャ神話が大好きなの!
 神さまなのに、嫉妬をしたり、うっかりミスをするんだよ?
 なんだか、とっても人間らしいと思わない?
 幼稚園生の頃、夜おふとんに入ると、わたしのママはギリシャ神話をたくさん聞かせてくれたんだ。
 あの頃は、空を見上げるのが大好きだった。
 空の上には神さまたちが住んでいて、わたしたちを見守ってくれているって本気で思っていたから。
 本音を言うと、中学に入学した今でも、本当だったら良いのにってちょっぴり思ってる。

 でも、大きくなって、気がついたんだ。
 誰も、神さまなんて信じていないってこと。
 神さまを信じていたわたしは「ヘン」な子だったってこと。
 だから、小学時代と同じ失敗はゼッタイにしない。
 中学では「フツウ」の女の子になる。
 もう二度と、キューピットさまに手紙を書いたりはしないんだ。