最大の事件を振り返ると、僕はゾッとした。これはタラレバの話である。

もし中学3年の卒業式に西村さんに告白し、付き合っていたとしたら。そして、この最大の事件が僕の人生で必然であるとしたら。

僕は怖くなった。

僕は高本君でなく西村さんを誘って映画を見に行っていたと思う、その場合、この最大の事件に高本君ではなく西村さんを巻き込むことになっていた。

僕は西村さんを守れたのだろうか?。高本君は男だったから財布を取られるだけで済んだのだが、もし西村さんだったら、それ以上に、レイプなどされていたのではないだろうか?と考えてしまう。

本当に怖くなった。手が震える。
僕が西村さんを守る方法。とてもシンプルで残酷だ。僕が西村さんを守るためにすべきことは、たった一つ、この事件が起きる前に「告白しないこと」。

これまでこんな考えをしたことがなかった。僕は告白しないことで西村さんを守っていたことに気が付いた。少し心が軽くなる感じがした。中学時代に告白できなかったことは、僕の人生で正しい選択だった。

これは単なるタラレバの話。しかし、このように考えると「告白しないこと」が唯一解としか思えなくなり、僕は運命の、そして初恋の残酷さを身に染みて感じた。