また同じ夢を見た。初恋の思い出、忘れた頃にいつも見る夢。この夢を見ると、1か月程度の間、僕の気持ちはかなり落ち込む。内容は、学校の教室で西村さんと楽しく会話している夢だ。楽しい夢のはずなのに、現実では確実に無理な状況と理解する度に、僕の心の片隅にある感情、とっても小さな感情が、夢により僕の心を広く侵食する。そして暴れだす。
夢を見ると、自問自答する。どうすればよかったのか?。どうすれば、僕は西村さんと付き合えることができたのか?。同じ夢を見た後は、毎回これを繰り返す。

中学3年の卒業式、告白していたら、どうなっていたのだろうか?
高校の入学式の翌日、駐輪場で「一緒に帰ろ」と言っていたら?
高校の廊下で会った際に、放課後に会う約束をしていたとしたら?
ほんのちょっと、僕に勇気が欲しかった。

こんな事いくら考えても、何も変わらないことは十分承知している。でも、もしも、ひょっとしたら。何を期待しているのだろうか。

後悔が僕の心を押すつぶす。他事に全く手がつかない状況に陥ってしまう。何かに集中していないと同じ考えを繰り返してしまう。

ただ、僕は一つのことを忘れていた。最大の事件のことを。
最大の事件は、僕にとって大きな傷であった。顔の傷もそうだが、友達を守れなかったことが精神的にも大きな傷であった。
そのため、この件に僕自身が触れること、考えることを無意識に避けていた。

でも、初恋と最大の事件は一緒に並べて見つめ直さないといけないことに、やっと僕は気が付いた。