「何らかの理解し難い力が働き、ティルダ様の言葉が何故か悪意ある言葉に入れ替わるのです……そんなティルダ様を断罪するなど、殿下のため……いいえ。この国の損失になります。どうか、僕の話を今一度お聞きください」
ゴートンはそう言い、顔を上げた。私へ意味ありげに目配せしたけど、それがどういう意味かわからない。
確かにゴートンにはゲームの強制力は、働いてないようだった。
以前会った時に、私だってそれは思った……けど、ここから彼が何をしようとしているかなんて、全然わからない。
「……何を言っている? リッター卿。お前が父上のお気に入りだろうが、関係ない。そこに居るティルダは何度もこちらに居るか弱き女性を虐め、命の危険にも晒そうとした。許し難い蛮行だ」
アーサーは隣で震えているヒロインの腰を抱き、事態が飲み込めぬまま呆然としている私を指差して言った。
「いいえ。僕は知っているんです。先ほどだって、ティルダ様は粛々と罪の罰を受けると言った。ですが、ここに居る皆さんには、口汚くそちらの彼女を罵り、自分は無実だとみっともなく喚いているように見えた……違いますか?」
「その通りだろう……いや、待て。ティルダの言葉が変換されて聞こえるだと?」
アーサーは頭を押さえて、苦しそうに呻いた。それは、周囲に居る人たちもそうだ。ヒロインだけはガタガタと震えていた。
「効き始めましたね。これは、神殿からお借りした御神体。そこにあるものは、ありのままの真実の姿が残り、まやかしは全て消え去ってしまうはずです」
「ちょっと! もうっ……余計な事はしないでよ! もう少しで、私はエンディングで幸せになるはずだったのに!」
さっきまで怯えて震えていたはずのヒロインの女の子がそう言って、私はその時にこの子も転生しているんだと悟った。
もしそうならば、私にわざわざ近づいて、虐められているような体勢になっていたことだって……全て、理解出来る。
私と彼女の役回りを理解していたから、そうしていたんだ。



