私は華やかな夜会で、自分の婚約者と乙女ゲームのヒロイン役の可愛い女の子が楽しそうに踊っているのを、抗議しに行くでもなくシャンパングラス片手にぼーっと見ていた。

 この状況が……嫌か嫌ではないかというと、正直に言えば嫌なんだけど、なにせこの世界初ゲーム進行の強制力が強すぎて、私は婚約者の心を取り戻すことは、早々に諦めてしまっている。

 だって、何をしても無理だもの。

 乙女ゲームの中へ転生したと気がついて丸三年、私だって断罪されることを防ごうと色々と改善しようと動いたし、これから私に起こるだろう悲劇の大元の原因となるヒロインには、なるべく近寄らないようにしていた。

 けれど、何をしても何をしなくても結果的に私が虐めたことになっているし、気がつけば私の近くにあのヒロインは居て、悲しそうな顔で泣き出しそうになってしまっている。