キミと踏み出す、最初の一歩。

「……わたし、わたしも」

「うん」

「わたしも、湊くんのことが……好き、です」


人生で初めて伝えた言葉に、みるみるうちに顔が真っ赤に染まっていく。

だけど両手を掴まれているから顔を隠すこともできなくて。


「うん、知ってた」


なんて笑う湊くんに、ますますわたしは赤面していく。

全身の血が全部顔に集まってるんじゃないかと思うくらい、暑くてたまらない。

恥ずかしさに泣きそうになっていると、湊くんはそんなわたしに気が付いたのか手を引いて立ち上がらせた。

そしてされるがままに、わたしの身体は湊くんに包まれる。

夏の暑さで苦しいくらいなのに、湊くんに抱きしめられるのは全然嫌じゃなかった。


「俺と付き合ってください」


もう一度そう言ってくれた湊くんに、わたしは


「よろしく……お願いします」


とだけ、どうにか答えることができた。

心臓の音が聞こえてしまいそうと焦っていたけれど、抱きしめられると湊くんの鼓動が直接伝わってきて驚く。

その音はわたしと同じか、もしかしたらそれ以上に早いかもしれない。


「……湊くんも、ドキドキしてくれてるの……?」


いつもそんな素振りを見せないから不思議に思ってそう聞いてみると、


「当たり前じゃん。好きな子目の前にして告白して抱きしめてんだよ。緊張もするしそりゃドキドキもしますよ」

「湊くんも、そうなんだ……」

「千春ちゃんは俺のことロボットか何かだと思ってる……?」

「まさか。ただ、いつも余裕に見えたから」

「そんなわけない。いつも千春ちゃんに嫌われないようにとか、好かれるようにって必死だよ」

「うそ……」

「嘘なんかつかないって」


わたしたちはお互いの気持ちを確かめるように、しばらくそのまま抱き合い続けていた。