「ぼーっとしてどうした?具合悪いのか?保健室行くか?」

「……あっ、いや、全然!全然っ、大丈夫ですっ!」

「そうか?」

「はいっ、ぐ、具合も悪くないし、手も全然痛くないですっ、ほら、全然……」


あまりの恥ずかしさと驚きで川上くんから手を抜き、痛くないアピールのために無駄に手首をブラブラと動かす。

だけどふと我に返ると、それすらも恥ずかしくて顔が真っ赤に染まっていった。

やだ、また赤くなってる。やだ、しずまれ。

今すぐ逃げ出したくなって、こんな顔を見られたくなくて下を向きながら泣きそうになっていると。


「フッ……なんだその動き」


吹き出すような笑い声が聞こえて、思わず顔を上げた。
王子様のような綺麗な人の、笑顔。

くしゃっとしたその笑い方が、すごく可愛らしくて。

あ、やばい。なんか……心臓が、変だ……。

ドキドキとうるさいくらいに胸が高鳴って、キューっとする。

川上くんから目を逸らすことができなくて、固まったようにその笑顔を見つめてしまう。


「これ、教室まで運ぶんだろ?俺も持つから早く終わらせようぜ」

「え……」


わたしの顔は今、絶対真っ赤で酷いはずなのに。

川上くんはそんなこと何も言わずに、普通に接してくれた。