「俺の身体に顔くっつけてな。そしたら誰にも見られないから」


何度も無言で頷いてぎゅっとしがみつくように湊くんに顔を埋める。

それに小さく笑ったかと思うと、湊くんはそのまま歩き始める。

そして教室から出る瞬間、一部始終を見ていたであろうクラスメイトたちに向かって、口を開いた。


「……さっき千春ちゃんはああ言ってたけど、俺は別に俺のことをどう思ってくれても構わない。……ただ、もしも俺の大切な人のことを悪く言ったり泣かせたりしたら。前々から勝手に言われてるくだらねぇ噂、本物にしてやるから覚悟しとけ」


今まで聞いたこともないほどにドスの効いた声に、わたしまでびくりと肩を跳ねさせてしまった。

それに気がついたか、


「っと、ごめん。怖がらせた?大丈夫、千春ちゃんには怒ってないから安心して」


それはつまり、わたし以外の人には怒っていると言うことだろうか。

そのまま湊くんはわたしを連れて保健室に入った。

先生は外出中で、部屋の中には誰もおらずがらんとしている。

ベッドに身体を置いてくれた湊くんは、


「ここなら誰もいないし今静かだから大丈夫」


と言ってわたしのすぐ隣に腰掛けた。