わたしの叫びにより、教室中が静まり返っていた。

誰かが唾を飲み込む音すら聞こえてしまいそうなほどに、静かな空間。

それを破ったのは、


「……千春ちゃん」


湊くんだった。

湊くんは困ったように頭をかきながら現れて、わたしの前に立つ。


「千春ちゃん」

「……湊くん」

「俺のためにありがとう。でも、無理しないで」

「無理なんてしてないよ」

「……そっか。でもちょっと疲れたでしょ。行こう」


湊くんは優しく笑ってわたしの手を引き、教室を出ていく。

その姿を誰もが驚いたようにじっと見つめていて。

わたしは今さら自分がしでかしたことに気付き、例の如く顔を真っ赤に染めてしゃがみ込む。


「千春ちゃん?どうした?」

「……ちょっと……ごめん」


手足が震えて歩けなくなってしまって、それしか言えない。

そんなわたしを見て、湊くんは呆れるでもなく怒るでもなく、


「歩けない?」


とわざわざ同じようにしゃがんで優しく聞いてくれる。
わたしの顔を赤さが見えたのだろう。

こくんも頷くと


「わかった。じゃあちょっと我慢してて」


と言うが早いか、次の瞬間わたしの身体がふわりと宙を浮く。


「ひゃっ……!?」


何が起こってるのかよくわからない。

だけど、湊くんに持ち上げられたのがわかる。


「なっ……え……うそ……」


それはいわゆる"お姫様抱っこ"というやつで、それに気がつくとあまりの恥ずかしさに気を失ってしまいそうだ。