キミと踏み出す、最初の一歩。

「実際に見た人がいるかどうかも知らないのに、想像で勝手に噂して、わたしのこと脅してるとか陰口叩いて……それは違うと思う。ダメなことだと思う。それが一番、川上くんを傷付けてると思う」


どんなに悪い噂がある人でも、その人の本当の部分なんて、きっと誰にもわからない。

もしかしたら見た目だけで、中身は自分たちと同じただの中学生かもしれない。

その人がたとえ笑っていても、心の中では傷付いてるかもしれない。

何も表情に出さない人でも、心の中では泣いてるかもしれない。

それは、ただ顔を見ただけじゃ全くわからない。

その人自身を知ろうとしない限り、絶対にわからないんだ。


「見た目は大事だよ。でも、それが全てじゃない。噂もそう。それだけが全てじゃない。……みんなは、自分のことでありもしない噂流されたらどう思うの?」


確かに湊くんのやり方が正しかったのかはわからない。

見た目を強くする以外に、何かやり方があったのかもしれない。

だけど、当時の湊くんは多分必死だった。

自分のことなんて後回しで美雨ちゃんを救うことだけを考えていて、周りなんてほとんど見ていなかった。

だからその間にありもしない噂がどんどん回っていって。

湊くんが気が付いた時には、否定したくてももうどうにもならないことになっていて。

怖かったと思う。苦しかったと思う。

だから、湊くんは一人でいる道を選んだんじゃないだろうか。

そう思ったら、わたしは湊くんがこんな風に言われてるのを見て黙っていることなんてできないよ。

湊くんはこんなに素敵な人なのに、勘違いされたままだなんて絶対嫌だよ。