キミと踏み出す、最初の一歩。

「今日からテストだね」

「さすがに教えてもらっておいて点取れませんじゃ笑えないから頑張るよ」

「うん。一緒に頑張ろう」


この学校では夏休みが終わるとすぐに中間テストが始まる。

始業式から数日後、今日がまさにその中間テストの初日だ。

珍しく早起きしたから、と登校途中に出会い、二人で並んで歩く。

学校に近づくにつれて相変わらず視線は飛んでくるけれど、誰もわたしたちに話しかけてくることはなかった。


「はいじゃあまずは数学からー。まず解答用紙から配るからなー」


教科担任の声に、教室中から緊張を感じる。

前の席の子がわたしに解答用紙を渡してくれる。

それを受け取ろうと手を伸ばすと、手が触れた瞬間にパッと離されてしまい、わたしたちの間に音を立てて落ちてしまった。


「あ……!」

「おーい、そこどうした?」

「あ……すみません、解答用紙落としちゃって」

「ちょっと待ってろー、今取りに行くから」


教室中の視線を集めてしまった。

前の席の女の子は、わたしとは関わりたくないのかすぐに前を向いてしまっている。

おそらく周りからはわたしが一人で手を滑らせて落としてしまったように見えてしまっているのだろう。

それにちくりと胸が痛みながらも、先生が拾ってくれた用紙を受け取る。


「じゃあ次は問題用紙配るからなー」


次はちゃんと受け取ることができたけれど、やはり前の席の子はわたしとは目も合わせないようにしているようだった。

テスト自体は、比較的落ち着いて挑めたと思う。

湊くんに教えることが多かったからか、わたしも改めて知識として身についたようで一学期の期末テストよりもスラスラ解ける問題も多かった。

二日に分かれたテストは体力も精神力も削られていったけれど、終わった後に


「千春ちゃん、教えてもらったところ出た!解けたよ!」


と湊くんが嬉しそうに喜んでくれるから、さっきまでのもやもやした気持ちやちくりとした胸の痛みなんてどこかへ飛んでいく。

頑張ってよかったと思えた。