キミと踏み出す、最初の一歩。

わたしと湊くんの噂は、当たり前だけどあっという間に学校中に広まっていった。

次の日登校すると、わたしのことをちらりと見つめてはひそひそと話す声が聞こえる。


……そりゃあ、いい噂の的だよなあ。


そう思うけれど、想像していたよりは自分自身にそんなにダメージは無くて逆に驚いた。


「千春ちゃん、おはよ」

「おはよう湊くん」


もしかしたら、湊くんが今日も変わらずに話しかけてくれるってわかっていたからかもしれない。

わたしと湊くんが一緒にいるのが相当物珍しいのだろう。

気が付けば他のクラスの人たちも見に来ていて、ちょっと気まずい思いをした。


「俺のせいでごめん」

「ううん。大丈夫」

「金髪やめればいけると思ったんだけどなー……あ、やべ」


湊くんの言葉に、やっぱりそうだったんだと納得する。


「千春ちゃん、今の聞かなかったことにとかは……」

「できません」

「ですよね。知ってました」

「……ありがとう。本当、ありがとう」

「……お礼を言われることはしてないよ。そもそも、噂なくなってないし。なんなら新しい噂増えてるし」

「え?どんなの?」

「なんか、千春ちゃんが俺に騙されてるだの、脅されて付き合ってるだの、いろいろ」

「そんな……酷い」

「俺は言われ慣れてるからいいんだ」

「何言ってるの。そんなの慣れちゃダメだよ」


嘘の噂を言いふらされることになんて、絶対に慣れちゃいけない。

でも多分、今までの金髪だったら噂を否定したくてもどうせ信じてもらえないっていう気持ちもあったんだと思う。

現にわたしもずっと噂を信じていたわけだし。


「それは噂されるような見た目にしてた俺が悪いだけだし。それよりも、俺はただ千春ちゃんの友だち作りにまた影響が出るんじゃないかと思うと……考え無しに行動しちゃって逆に迷惑かけてるなと思って」


湊くんはたくさん考えてくれたのだろう。

何度もごめんと謝ってくれるけれど、正直言うと今はあんまり友だち作りも気にしていない。


「……いいよ。湊くんがいるから」

「……え?」

「友だち。湊くんがいるからいいの。さっき、そう思った」


安心させたくてそう笑ってみせると、湊くんはうっすらと顔を赤くする。

その照れている表情は金髪のころの湊くんと何も変わらなくて、なんだか嬉しくなった。