「おぉ、川上も来たか。早く荷物置いて並べ……え?」


それは山田先生も他のクラスメイトたちも同じだったらしく、


「え?嘘……」

「どうしちゃったの?」

「そんなの俺に聞かれても知らねぇし……」

「こんな時間に学校にいることですら珍しいのに……」


一気に辺りはザワザワとし始めた。


「お。おい……川上、お前、一体それどうした……」

「ん?なに?それってどれ?」

「それだよそれ……」

「ん?だからどれ?」

「頭!お前の頭だよ!どうしたんだよその色!」

「え?色?あぁ……これか」


頷きながら髪の毛にくるりと指を這わした湊くん。

わたしは今だにその姿から目が離せなくなっており、そんなわたしと目が合った湊くんは嬉しそうに目を細めていて、わたしの胸は勝手にドクンと高鳴る。

だって。だって!

湊くんのあの金髪が!キラキラの金髪が!なくなってるんだもん!


「せんせーが言ったんだろ。成績残せないなら黒染めしてこいって」

「いや、確かにそう言ったけどお前が本当に染めてくるわけないと思ってたから……」

「んだよ、生徒のことなんだと思ってんの?……まぁ、俺もついこの間まで染める予定なんてなかったけどさ」

「じゃ、じゃあなんで」

「んー……まぁ、心境の変化ってやつ?大人になったんだよ、俺」

「……一体何があったんだ……?」

「いいじゃん。せんせー的にはこの方がいいんだろ?」

「いやまぁそうだけど……お前本当に何があったんだ?」


山田先生の声に笑った湊くん。

その姿は金髪ではなく、清潔感のあふれる黒髪となっていた。

制服の着崩し具合は相変わらずだけど、金髪から黒髪になっただけでかなり印象が変わる。

長さ自体少し短くしたのか、おしゃれに流していてさらにかっこよさに磨きがかかっている。