第一、金髪の中学生なんて初めて見た。

ヘンケンってやつだってわかってる。

わたしのことをタコだの真っ赤だの言った人と何も変わらないってことも、わかってる。

だけど、噂が噂だからやっぱりちょっと怖い。

とは言え、川上くんは遅刻や早退が多いしたまに授業に出ていても大体寝ている。

こんな風に職員室にいるところどころか、喋ってるところも初めて見たかもしれない。


「白咲?どうした?」

「え……あ、いや、別に……」


やばい、ジロジロ見てたって思われる。


「そうか?じゃあノート頼んだぞ」

「はい……」


川上くんの視界に入らないうちに早くノートを運んでしまおう。

本当は何回かに分けようと思ったけど、川上くんがいらなら話は別だ。

重そうだけど、頑張れば全部いけるはず。

そう思って積み重なったノートを手に取り持ち上げた。
しかし、


「わっ……!?」


持ち上げる時にバランスを崩してしまい、積み上がったノートが上の方から滑ってずれていく。


「あ、だめっ、待ってっ」


そう叫んでも、ノートが待ってくれるわけなんてない。

反射的にぎゅっと目をつむると、バサバサと大きな音を立てて半分くらいのノートが床に落ちてしまった。


……やばい、やらかした!


恐る恐る目を開くと、ノートは見るも無惨な形で転がっている。

しかも、そのうちの何冊かは誰かの足に当たってしまっていた。

先生のものではないその足。

ま、まさか……。

怖くなって震えながら見上げると、


「……ヒッ!?」


やはりそれは川上くんの足だった。