「あ、今日満月だ」
「本当だ」
そんな話をしながら歩いていると、不意に湊くんが
「千春ちゃん」
とわたしを呼ぶ。
そう呼ばれることにいまだ慣れていないわたしは肩を揺らすけれど、湊くんは空を見上げたままこちらを見てはいなかった。
「どうしたの?」
「……俺も、千春ちゃんにありがとうを言わないとと思って」
「え?」
「俺も、引っ越してから仲良い友だちもいないし、今まで中学なんて楽しくなかった。だけど、千春ちゃんと出会って俺も今はすごい楽しみ。学校も悪くないじゃんって思えた。だからありがとう」
「湊くん……」
「でも、多分学校が始まったら、また俺はいろんな噂されると思う。それに、俺と一緒にいたら千春ちゃんもいろんなこと言われる。だから、夏休みが終わっても学校では俺からは話しかけないようにするから」
そう言ってわたしの方を見た湊くんは、すごく寂しそうで切なそうな表情をしていた。
それは、わたしのために言っているんだろう。
そんなの気にしなくていい。わたしだって、いろんなこと言われる覚悟はしてるから一緒にいるのはやめない。
……そう、言いたいのに。
「湊くん……」
そう、言いたいのに。
うまく、言葉が出ないのはどうしてなの?
「本当だ」
そんな話をしながら歩いていると、不意に湊くんが
「千春ちゃん」
とわたしを呼ぶ。
そう呼ばれることにいまだ慣れていないわたしは肩を揺らすけれど、湊くんは空を見上げたままこちらを見てはいなかった。
「どうしたの?」
「……俺も、千春ちゃんにありがとうを言わないとと思って」
「え?」
「俺も、引っ越してから仲良い友だちもいないし、今まで中学なんて楽しくなかった。だけど、千春ちゃんと出会って俺も今はすごい楽しみ。学校も悪くないじゃんって思えた。だからありがとう」
「湊くん……」
「でも、多分学校が始まったら、また俺はいろんな噂されると思う。それに、俺と一緒にいたら千春ちゃんもいろんなこと言われる。だから、夏休みが終わっても学校では俺からは話しかけないようにするから」
そう言ってわたしの方を見た湊くんは、すごく寂しそうで切なそうな表情をしていた。
それは、わたしのために言っているんだろう。
そんなの気にしなくていい。わたしだって、いろんなこと言われる覚悟はしてるから一緒にいるのはやめない。
……そう、言いたいのに。
「湊くん……」
そう、言いたいのに。
うまく、言葉が出ないのはどうしてなの?



