美雨ちゃんとは初めて会った時から何回か顔を合わせたことがあるけれど、その度に緊張しながらもわたしに挨拶をしてくれる。

笑顔を見せてくれたり、こうやって同じ空間に長くいてくれたり。

多分、わたしに心を開いてくれているんだと思う。

それが嬉しいし、こうやって言葉で気持ちを表してくれるのが本当にすごいことだと思う。

でも湊くんはそれが面白くないのか、


「お前が千春ちゃんのこと大好きなのはわかったから、とにかく一旦戻れ!それか母さんのクッキーが焼けた頃だろ!一緒にデコるだかなんだかって言ってなかったか?」

「あ、そうだった!わたし行ってくる!千春ちゃん、可愛いクッキー持ってくるからちょっと待っててね!」

「あ、うん。ありがとう……」


美雨ちゃんがドタバタと部屋を出て階段を降りていく。

その音を聞いて、湊くんは気まずそうに頭を掻きながら


「美雨がごめん。あいつ、なんか知らないけど千春ちゃんにめちゃくちゃ懐いてるっぽい」

とため息をついた。

「全然気にしてないよ。むしろ懐いてくれて嬉しい」

「そうか?」

「うん。わたし、一人っ子だから兄妹とかそういうのにずっと憧れてたの。だから二人の仲の良さが羨ましいんだ」

「……そうか」


湊くんはしばらく照れたような素振りを見せていたけれど、すぐにいつもの湊くんに戻った。

ゲームの話や学校の話、この間の夏祭りの話なんかをしているうちに時間は経ち、美雨ちゃんがアイシングでデコレーションした可愛らしいクッキーを持って戻って来た。


「おいしい!それに可愛くてすごいね。美雨ちゃんが作ってくれたの?」

「うん。クッキーの生地も一緒に作ったんだ。甘すぎたりしない?」

「ううん。ちょうどいいよ。おいしい。ありがとう」


そこから美雨ちゃんも交えて三人でゲームをすることになり、滅多にやらないわたしは二人に教えてもらいながらどうにかついていく。

気が付けば窓の外は暗くなって来ていて、


「湊ー!美雨ー!千春ちゃーん!ご飯よー!」


と、二人のお母さんに呼ばれてリビングに向かった。