「ははっ、またなんか考え込んでるだろ。別に友だちだろうがなんだろうが、好きな呼び方でよくない?まぁ、美雨だけ下の名前で呼び合ってんのちょっとずるいから、俺も今日から千春ちゃんって呼ぼうかな。いい?」

「あ、はい、もちろん!」


"千春ちゃん"


ナチュラルにそう呼ばれて、心臓が激しく高鳴る。


「千春ちゃんは気にせず今まで通り名字で呼んでくれてもいいから」


川上くんはそう言ってくれるけれど、わたしだけ名字呼びっていうのもなんか違う気がする。

でも、呼び捨てはハードル高すぎるし……。


「あ、あの……」

「ん?」

「あの……わたしも、そのっ、湊くん……って、呼んでもいいですか……?」


わわ……!呼んでみたら想像以上に恥ずかしいかも!

いきなり湊くん、だなんて失礼じゃないだろうか。

嫌な気持ちにならないだろうか。

そもそもそう言ってみたけど、わたし本当に"湊くん"って呼べるの……?

恥ずかしさからパニックに陥ってしまい、わけもわからず両手で顔を覆って逃げるように後ろを向く。

すると


「千春ちゃん、かわいい……!」


と美雨ちゃんが追い打ちをかけてくる。

今はやめて……!と思いつつ、川上くん改め湊くんの反応が気になり、ほんの少しだけ身体の向きを戻して見る。

手を動かして少しだけ見つめてみると、なんと同じように顔を手で覆って逸らしていた。