「やば、もうすぐ花火あがる」

「え。そうなの?」

「うん。ちょっと急いで場所移動してもいい?」

「うん」

「もういいとこ空いてないかもだけど、向こうの方からがよく見えるって聞いたから」

「わかった」


気が付けば辺りも暗くなり始めていて、人の流れも少し変わってきていた。

わたしたちも少し歩いて場所を移動する。

すると、少し開けた静かなところに出た。

どうやら神社の境内のそばのようで、同じように花火を見に来たであろう人たちがパラパラと見える。

見渡す限りみんなカップルだらけで、なんとなく甘い空気が流れているように感じた。

川上くんは木の間から空が見えるところで立ち止まり、さっき買ったたこ焼きを渡してくれる。


「もうすぐ始まると思うから、それまでこれ食って待ってよう」

「うん。でも、よくこんなところ知ってるね?」

「それは……美雨伝いに、美雨の友だちから教えてもらったんだ」

「そうなの?」

「あぁ。せっかくなら、人混みじゃなくて静かなところで見たいだろ?」

「うん。でもじゃあ、美雨ちゃんもこの辺にいるの?」

「いや、美雨たちは打ち上げ場所のすぐ近くから見るって言ってたよ。そっちの方が迫力がすごいんだって。かなりの人数そこに集まるらしいから見えるのかよくわかんないけど」

「そっか。美雨ちゃんにも会いたかったなあ」


さっき買ったたこ焼きを頬張りながら言うと、川上くんは少し考えてから


「美雨に会いたいなら、今度うち来るか?」


と提案してきた。