「ん?」


首を傾げると、


「人多いから、はぐれたら困るだろ。……だから、手」


顔を逸らしながらそれだけ言った川上くんに、わたしは赤みが引くどころかもっと赤くなっていきそうだ。

もしはぐれたって、スマホもあるしこんなに目立つ金髪の人なんだから、すぐ探せると思うんだけど……。

なんて、そんなこと言ったら怒られてしまいそうだ。

その右手に恐る恐る左手を乗せると、


「勝手に離すなよ」


と、ぎゅっと握ってそのまま歩き始める。

恋人同士のように繋がれた手と手。

わたしが知らないだけで、友だち同士でも人混みではこうやって手を繋ぐのは当たり前なのかな……?

心臓がバクバクとうるさくて、川上くんにも聞こえてしまいそう。


「……あと」

「ん?」

「浴衣、似合ってる。可愛いよ」

「っ……あり、がとう」


突然の"可愛い"に思わず肩を跳ねさせてしまう。

胸がドキドキして破裂してしまいそうで、恥ずかしいのにちょっと嬉しいと思っている自分がいることに、頭がついていかない。


「……ちょっと可愛すぎて、心配になるよ」

「え?何か言った?」

「ううん。なんでもない。行こう」


後ろから見る川上くんは、耳がうっすらと赤く染まっていた。