迎えた昼休み。
とりあえず早く運んで終わらせちゃおう。
そう思い、急いで職員室に向かった。
だけど、職員室の中では珍しく誰かが山田先生に叱られているよう。
その叱られている生徒の後ろ姿を見て、わたしは驚いて足を止めた。
あれって……もしかして……!?
普通の中学生ではまずいないであろう、太陽の光を反射してキラキラと輝く綺麗な金髪にだるそうに着崩された制服のワイシャツ。
それは、友だちのいない私でもそれなりに知っている人。
川上 湊。
同じクラスの彼が、そこにいた。
「え、課題とか聞いてないし無理なんだけど」
「今言ったし無理じゃない。川上、お前この間のテストの成績自分でわかってるか?家の事情もわかるけど、それにしたって遅刻も多いし早退も多い。真面目に授業に出てるかと思えば寝てるしテストの点も悪い。そもそもその金髪!直せって何回言っても聞く気ないだろ。このままじゃ成績付けらんないんだよ。そうしたらどこの高校も行けないぞ」
「高校って……俺まだ入学したばっかりなんだけどー」
「それはそうだけど、テストの点が悪かったら内申点にも直結するんだ。遅刻が多いならせめて点を取れ。その見た目も直す気ないなら教師陣が黙るくらいの成績残せ。無理なら今すぐ黒染めしてこい。そのためにまずは毎日勉強する癖をつけろって言ってんだよ」
「わかったわかった。明日から頑張るから」
「先週もそう言ってなかったか?今日も遅刻した癖に……だから夏休み前に居残り用のプリント出すから、ちゃんとやってこい」
「えー……なんでそうなんの」
「そうでもしないとお前はちゃんとやってこないからだ。毎日一枚やれば終わるし、全部休み明けのテストの範囲にしておくから真面目にやれば点も取れる。どうだ?」
「いやそう言われても……」
「わからなかったら誰かに教えてもらってもいいし。友達くらいいるだろ?」
「いや?いねぇ」
「お前なぁ……」
呆れたような山田先生の声と開き直っている川上くん。
わたしは二人を前に、足を止めたまま進むことも戻ることもできずに固まる。
どうしよう、川上くんがいるなんて……。
後でもう一度出直そうか。そう考えてそっと逃げようとした時。
「お、来たか白咲。ノートここにあるから持って行ってくれ」
山田先生にあっけなく見つかってしまい、逃げることはかなわなかった。



