「白咲さん、ありがとな」

「え?」

「美雨のこと。ああ言ってくれて、多分美雨も安心したと思うから」

「ううん。……わたしが小学生の時に言われたかったことを言っただけですよ」

「……そうか。でもそれは美雨も言われたかったことだと思う。だからありがとう」

「……どういたしまして」


"そのままでいい"

"馬鹿になんてしない"

"自己紹介してくれて、ありがとう"


特別なことじゃない。

全部、わたしが小学生の時に誰かに言われたかった言葉たち。

わたしはそれを言っただけだ。

不安な気持ちも緊張も、何もわたしには取り除くことはできないけれど、その気持ちに寄り添うことはできるから。

川上くんは、その後もしばらく美雨ちゃんの後ろ姿を見つめていた。