「おい美雨、それは失礼だろ」

「で、でも……緊張して……顔赤いの見られたくないから……」


美雨ちゃんの気持ちがよくわかり、胸が痛くなる。


「あの、美雨ちゃん」

「え、はい……」

「わたし、あがり症なんです。だから、その……今の美雨ちゃんの気持ち。よく、わかります。……緊張するの嫌だよね!顔赤くなるのも嫌だよね!えっと……わたしも今、心臓バクバクしててすごく緊張してるの。だから、その……わたしも、美雨ちゃんと同じだから大丈夫です。馬鹿にしたりなんかしないから」

「……千春ちゃんも、あがり症?」

「うん。だから安心してって言うのも変だけど……わたしも顔が赤くなるのがすごく嫌で、気にしてるの。今急に会ったからびっくりしたよね。その気持ちわかるから、そのままでいいよ。自己紹介してくれて、嬉しかった。ありがとう」


言葉につまりながらも深呼吸を繰り返しながら伝えると、川上くんはフッと笑ってくれる。


「……あ、ありがとう。千春ちゃん……」


川上くんの背中から顔だけ出した美雨ちゃん。

川上くんの服をぎゅっと握っているのがたまらなく可愛い。それと同時に胸が苦しくなる。

わたしと全く同じように顔を赤くした姿を見ると、前に川上くんが言っていた通りとても他人とは思えなかった。

美雨ちゃんは友だちを待たせているらしく、話が終わるとそのまま走って駅の方へ向かって行った。

わたしたちはその後ろ姿を見つめる。