「あれ、美雨?こんなとこでどうした?」

「これから宿題やりに友だちのお家に遊びに行くの。お兄ちゃんはどうしたの?」

「俺はもう帰るとこ。暑いだろ、ちゃんと飲み物持ったか?」

「うん。お茶持ったから大丈夫」


どうやら川上くんの妹さんらしい。

金髪の川上くんのとは違い、サラサラの黒髪をポニーテールにしている。

おしゃれなリボンがついた服にひらひらのスカート。

見ているだけで可愛くて、まるでお人形さんみたいだ。

川上くんとは違い、小柄な女の子。

高身長の川上くんと並ぶと、五歳くらい離れているように見えてしまう。

顔は川上くんにそっくりで可愛くて、川上くんが素敵な王子様なら妹さんは可愛らしいお姫様と言えばいいだろうか。


……いや、小動物の方が近いかも。


「あ、白咲さん。こいつ、俺の妹の美雨。美雨、こっちは俺の友だちの白咲 千春さん。美雨、挨拶くらいはしろよ」


川上くんに促されて肩を揺らした妹さんは、まるでライオンに見つかったうさぎのようにぷるぷるとしていた。


「えっと……ハジメマシテ……白咲さん。美雨です……」

「え、あ、や、千春でいいです。初めまして。美雨さん」

「や、さんなんてやめて……呼び捨てでいいです……」

「いや呼び捨てはさすがに……じゃあ、美雨ちゃんで」

「はい。じゃあわたしも……千春ちゃん」


こんなところで突然会うなんて思ってなかったからあがり症が発動してうまく喋れない。

だけど、美雨ちゃんもあがり症だって川上くんが言っていた通りわたしと同じようにガチガチに緊張している様子。

わたし以上に目が泳いでいるところを見るに、多分わたしがいることに気が付かないまま川上くんに声をかけたのだろう。

その姿が本当にうさぎにしか見えなくて、なんとも可愛らしい。

ここは年上のわたしがしっかりしないと。そう思ってあわあわしながらも自己紹介を終えると、美雨ちゃんは緊張がピークに達したのか、川上くんの後ろにひょいっと隠れてしまった。