「……いいの?」

「な、にが……」


今まで見たことのないくらい真剣な顔。

それに捕らえられたかのように、目が離せなかった。


「夏休みにまで教えてもらうの。迷惑じゃないか?」

「ぜ、全然!迷惑なんかじゃないです。むしろ……」

「むしろ?」

「いや、あの。むしろ……誰かに教えながらやると自分でもよく理解できるので……わたしの方こそ助かるというか……」


……わたし、今何言おうとした?


むしろ……夏休みも川上くんと会えると思うと嬉しいです、だなんて。

そんなこと言ったって、川上くんを困らせるだけなのに。

顔から火が出そうなほどに恥ずかしい。

だけど、そんなわたしに気がついているのかいないのか、川上くんは


「……そっか。それならお願いします」


と安心したように笑ってくれた。

離れた手が、少し寂しい。

そのまま歩いているうちに、分かれ道に差し掛かる。

どちらからともなく、そこで立ち止まって顔を見合わせた。


「図書館は明日から行くのか?」

「はい。朝から行こうかなって」

「何時くらい?」

「十時過ぎかな……」

「ん、わかった。じゃあ俺もそれくらいに行くよ」

「わかりました」

「じゃあ、また明日な」

「はい、また明日」


手を振ってお互いの家の方に足を進める。


"また明日"


夏休みに会って一緒に宿題するなんて、友だちみたい。

嬉しさに頬が緩む。

家に帰るとお母さんに


「何かいいことでもあったの?」


と言われてしまうくらいだった。