「白咲さん?どうかした?」

「え?」

「なんか、元気ないから」

「そんなこと……」


帰り道、見透かされたように言われて、わたしの顔は下がる。


「明日から夏休みかー。なんか、全然実感無いや」

「それは多分、川上くんが終業式出てないからだと思うけど……」

「ははっ、そりゃあそうだ」


川上くんはきっと、夏休みの間は前住んでいたという隣町の友だちに会いに行ったりするのだろう。

わたしは図書館と、お盆はお墓参りと……お父さんもお母さんも仕事だろうし、おでかけはほとんどできないだろうなあ。

川上くんとも会えなくなるだろうし、また友だちのいない寂しい生活に逆戻りか……。

切なさにため息をつきたいのを堪えていると、川上くんが言いにくそうに


「なぁ、白咲さん」


と話しかけてきた。


「……夏休み、俺も図書館行ってもいい?」

「……え?」


顔を上げると、川上くんはほんのり顔を赤くさせている。


……もしかして、照れてる?


見慣れないその光景に、わたしは目を見開いた。


「その……図書館で宿題するんだろ?俺、家じゃゲームしちゃうから、どっか外でやらないと終わらないんだよ。だから……俺も行っていいか?」

「は、はい。もちろん」


そもそも、図書館に行くことにわたしの許可なんていらないのに。

そう考えて、もしかして、と自分に都合の良い考えが浮かんでしまう。

まさか、そんなわけないのに。

そう思うのに、気が付いたら今度はわたしから声をかけていた。


「……わたしで良ければ、宿題も一緒に……教えましょうか?」


まさか、川上くんが夏休みもわたしと一緒に勉強しようなんて考えてるわけないのに。


「って、ごめんなさい。わたし何言ってんだろ……」


ただ宿題するだけで、わたしがいる必要はないんだ。

赤くなる顔を手で仰ぐと、不意にその手を取られて固まった。