「噂がデマって一体……」

「俺、入学早々先輩のことやっつけたとか言われてるらしいけど、それもなんか偶然目の前で揉めてた人たちがいたから間に入っただけで。その妹をいじめた奴ぶっ飛ばした以外は一度も喧嘩もしたことないし補導されたこともない。そもそもたまにコンビニ行くくらいで夜に出歩いたりもしてない。引っ越す前は隣町にいたからたまに向こうの友だちと会うことはあるけど別にあいつらはヤンキーってわけじゃないし。なんなら俺の金髪見てシスコン扱いしてからかってくるだけだし」


シスコンだなんて、川上くんの見た目からは想像もつかない。


「……でも、じゃあよく遅刻したり早退してるのは?」

「遅刻してるのは夜中までゲームばっかしてて寝坊してるだけ。だから親には毎朝キレられてる。早退してたのは単純に友だちいないから学校つまんなかったってのと、妹が友だちできるまではやっぱ心配でたまに見に行ったりしてたんだ」


それって、つまり川上くんの悪い噂はほとんど嘘で、川上くんが金髪なのは妹さんのためで。ゲーム三昧で不真面目ではあるけど喧嘩も夜遊びもしなくて不良ではなくて……?


「まぁ、最近は妹も落ち着いてきたし、白咲さんのおかげで学校も意外と楽しいかもしれないと思い始めたし、それで早退することは減ったけど。遅刻グセはダメだな、しばらく治りそうもない」

「ゲームをやめるっていう選択肢は……」

「あー、それは無いね、無理」

「……」


あれ?もしかして、川上くんって怖い人じゃ……ない?


「どう?これで俺のこと、少しは怖くなくなった?」


驚くわたしを見てにやりと微笑んだ川上くん。

ワクワクしているような、面白そうな、そんな表情。

その表情がかっこよくて、わたしは言葉を詰まらせて息をのむ。

どうにかこくりと頷くと、

今度はわしゃわしゃとわたしの頭を撫でられてびっくりした。