「……川上くん?」

「ちょ、待って、そんなまじまじと言われると照れる」

「あ……ごめんなさい。わたし、余計なことを」

「いや、違う違う。違うんだけど……初めて言われたから、かなりびっくりして」

「ごめんなさい、思わず口に出ちゃって……」


川上くんが照れているのを見て、わたしも照れが移ってしまい二人で顔を赤くする。

王子様だとか、ヒーローだとか、わたし、さっきからずっとすごいことばっかり言ってない?

それに気が付いた途端、恥ずかしさのあまりもう顔を上げることができずに両手で覆った。

しばらくして、川上くんがごほんと咳払いをして、もう一度シャーペンを持つ。

そして仕切り直すように続きを話し始めてくれた。


「まぁ、そんな感じだからさ。俺は残念ながら王子様なんてガラじゃないんだよ。どっちかって言ったら……なんだろ、ヒーローでもないし……悪役?わざと悪く見せてるって感じだな」

「そ、そうなんですね……」

「うん。だからこの髪色が原因で俺がいろんなこと言われてるのは知ってるんだけど、今のところは変えるつもりはないよ。噂もほとんどデマだけど、その方が妹守るためには都合が良かったりもするしな。……よし、終わった」

「……え、もう終わったんですか?」

「ん?あぁ。言ったろ。数学は得意だって。ほら」

「本当だ……」


渡されたプリントは、最後まで終わっていて全問正解だった。

昔話をしながら解けるなんて、やっぱり川上くん、すごく頭がいい。


……あれ?でもさっき川上くん、何か言ってなかったっけ……。


噂が……全部デマって言ってた?

それって、嘘ってこと?