「ま、勝手に染めたことで両親にも学校にもキレられるし、相手にやり返しに行ったこともバレて勝手なことすんなって叱られたし、散々だったけどな。でも、妹を助けたってのだけは誇らしかったよ。初めて妹が頼ってくれたのもなんか嬉しかったし、兄貴っぽいことできて良かった。両親もやり方は別としてそこは褒めてくれた。結局その後すぐばあちゃんが足悪くして一緒に住むからって今の家に引っ越しが決まってそれで終わったんだ。妹もこっちの学校では友だちもできたみたいで楽しく通ってるからもう金髪である必要は無いんだけどさ。もうこの色に慣れちゃったから」

「そう、だったんだ……」

「褒められたことじゃないけどな」

「……でも、かっこいいです」

「え?」

「妹さんにとっては、川上くんはヒーローだったんだ」

「……ヒーロー?」

「はい。かっこいいヒーローだと思います」


ただからかわれただけのわたしより、ずっとつらい思いをしてきたはずの妹さん。

お兄さんである川上くんに打ち明けることが、どれだけ勇気が必要だっただろう。


"助けて"


その一言を伝えることが、どれだけ心を重くして苦しめたのだろう。

勇気を出して伝えた妹さんもすごい。かっこいい。

それと同じくらい、妹さんの心の叫びを受け取ってくれた川上くんもかっこいいと思った。

確かに褒められたことじゃないかもしれない。

大人の力を頼るべきだった。そう言われたら何も言えないと思う。

だけど、その時の妹さんにとっては、川上くんは間違いなくヒーローだったと思う。

川上くんが助けてくれたことは何よりも力になっただろうし、今も見守ってくれているのがわかるから、それが新しく友だちを作る勇気につながっているのだろう。

すごいなあ。かっこいいなあ。

笑って告げると、川上くんは一瞬で顔を真っ赤に染めた。