キミと踏み出す、最初の一歩。

「最後の科目は?」

「数学。得意なもの後にしたほうがいいかなって思って残してたんだ」


言葉通り、川上くんはさらさらと計算式を書いていき解いていく。

わたしが教える間も無くあっという間に半分が終わったところで、わたしはずっと聞きたかったことを聞いてみることにした。


「あの……」

「ん?」

「一つ聞いてもいいですか?」

「うん、いーよ」

「どうして、わざわざ金髪に?」

「え?」

「校則違反で怒られるのわかりきってるのに、どうしてそこまで金髪にこだわるのかなって思って」

「あぁ、まぁ……別に今はもう深い意味はないんだけどさ。最初は妹のために染め始めたんだ」

「妹さん?」

「あぁ。今小学生……四年生なんだけどさ。昔ピアノの発表会で失敗しちゃってからかな、かなりのあがり症なんだ。それが原因で前の学校でいじめられてた」

「え……」


全く想像もしていなかった話に、わたしは固まって川上くんを見つめてしまう。


「妹は家ではよく喋るし俺とは常に喧嘩もする。だけど人前に出るとどうしてもダメで。いじめられてたこともあって外にあんまり出られなかった。俺はやんちゃな悪ガキだったから毎日外で遊び呆けてて、妹がいじめられてたことなんて全く知らなくてさ。ただインドアなだけだと思ってたんだ。だけど、ある時初めて泣いて助け求められて……。"お兄ちゃん、助けて"って。両親は共働きだから言えなくてずっと一人で抱えこんでたらしいんだ。それで俺、気付かなかった自分にもそのいじめてた相手にもブチギレて、速攻相手ぶっ飛ばしに行った」

「ぶ、ぶっ飛ばしに?」

「そう。うちの妹に何してんだって。それで妹に謝った。気付けなくてごめんって。それで一旦いじめはおさまったんだけど、妹はそれでも"また仕返しされるかもしれない""今度はお兄ちゃんに仕返しにくるかもしれない、ごめんなさい"って泣き始めちゃって。だから、それなら仕返しされないようにしてやろうって思って、見た目怖くしたらいけんじゃね?って思って。気付いたらこうなってた」


そしたら今度は辞めどきがわかんなくなっちゃって……。と笑う川上くんにわたしは何も言えない。