キミと踏み出す、最初の一歩。

「髪、触ってみる?」

「だっ大丈夫です!」

「ははっ」

「つい綺麗だったから……ごめんなさい。寝てる人の髪の毛勝手に触ろうなんて、ありえないですよね……」

「いーよ全然。むしろ減るもんじゃないし、触りたかったらいくらでもどーぞ。それにどっちみちあんまり寝れてなかったから」

「え、でもさっきまで寝てたんじゃ」

「うっすらとね。うるさかったのが急に静かになって逆に中途半端に目覚めちゃって。だけどもうちょっと寝てたいなーって思ってたら、なんか白咲さんの声がしたから」


起きてるなら起きてるって言ってくれればいいのに……!


「でもまさか、白咲さんがそんな風に言ってくれるとは思ってなかったなぁー」

「……どうかさっきのは忘れてください」


穴があったら入りたいって、多分こういう時に言うんだ。

まさに今、どこかに隠れたくて仕方がない。


「なんで?俺嬉しかったけど?まぁ、確かに王子様なんてガラじゃねぇけどさ」


川上くんは


「王子様なんて初めて言われた。嬉しいよ」


なんて言いながら、嬉しそうにその金髪を触る。


「っと、それよりも俺が起きるの待っててくれたんだろ?最後のプリント終わらせちゃってもいい?」

「あ、はい」


そうだった。そのためにわたしも待っていたんだった。
本当は川上くんを起こすつもりだったのに、とんだ恥ずかしいマネをしてしまった。

嬉しそうに笑う川上くんはそのままプリントを机に出して、私も立ち上がった体をもう一度座らせる。