キミと踏み出す、最初の一歩。

「……わたし、何やってんだろ……」


寝ている人に勝手に触ろうとしたり、寝顔覗き込んだり。

かなり失礼じゃないか。無防備な時にそんなことされたらわたしだって多分嫌だ。

そう思ったら急に居た堪れなくなって、席を立つ。

一旦冷静になろう。そう思って自分の席に戻ろうとした時。


「……なんだ、触んないのか?」

「……え……?」


掠れたような声に振り向くと、薄目を開けた川上くんがわたしの方を見ながらあくびをしていた。


「ご、ごめんなさいっ!」

「ん?なんで謝んの?……あー……よく寝た。つーか、もしかしてもう放課後だったりする?」

「え……あ、はい。もう終業式も終わって、ホームルームも終わってみんな帰っちゃって……」

「マジか。遅刻したからもういいやって思って式が終わるまで寝てるつもりだったんだけど寝過ぎたな。……でもすっきりした。あ、おはよ白咲さん」

「おはよう……ございます」


反射的に挨拶を返すと、川上くんは当たり前のように伸びをしてぐるりと首を回している。

わたしはそんな川上くんを見ながら、席に戻ることもできずに慌ててしまう。


待って、いつから起きてたの?

触ろうとしてたこと、気づいてたよね?いや、それよりわたし、何か口走ってなかった?

王子様みたいだとか、そんなこと声に出してなかった……?


恐る恐る、川上くんに


「あ、あの……いつから起きて……」


と聞いてみると、


「ん?あぁ……王子様みたい、ってとこくらい?」

「なっ!」


ほぼ全部じゃん!

まさかの事実に今すぐ逃げ出したくなる。