川上くんは思っていた以上に集中力が高くて、本当は普段から勉強していればわたしよりテストで点数が取れると思う。

川上くんはわたしの教え方が良いって言ってくれたけど、やっぱり元々の頭が良いのがわかる。

プリントを解き終わるとハイタッチするのが恒例になり、いつしかわたしからも手を伸ばすようになっていた。


「そういえば、今日の昼にやった漢字の小テストあっただろ?あれ俺、満点だった」

「え!すごい!」


川上くんはわたしとの勉強会を始めて以来、授業にも真面目に出席することが増えた。

相変わらず遅刻はあったけれど、早退する日は減った。

授業の途中でいなくなることはあっても、放課後になるとふらっと戻ってきたりするから不思議。

授業中どこに行ってたの?なんて、聞いてみたいと思うことはあっても、実際に聞くことはできない。

だって、わたしたちは多分友だちではない。

友だちになろうなんて言ったこともないし言われたこともない。

そんな人に、自分のことを聞かれたって嫌だろう。

わたしたちは、ただ勉強を教える立場と教えてもらう立場。

夏休み前までの約束。

つまり、夏休みが終わったらこの関係は終わってしまうんだから。

この勉強会が始まる前は、早く夏休みになれ、なんて思っていたわたしがいた。

だけど、今は少しだけ寂しいと思っているわたしがいる。

自分の心境の変化に驚くばかりだけれど、多分、こんな穏やかな時間が久しぶりすぎて楽しいんだ。