「……白咲さんって、すげぇな」

「……え?」

「かっこいいよ」


川上くんの言葉の意味はわからなかった。

だけど、からかわれてるわけじゃない。

それだけはわかった。


「じゃあ、今度こそ明日から。……勉強、お願いしてもいい?」

「は、はい。わたしで良ければ」

「ありがとう。じゃあ今日はもう遅くなっちまったから帰ろうか。家どっち方向?」

「あ、えっと……駅の向こうです」

「あれ、もしかして家近いかも。一緒に帰ろーぜ」


成り行きで一緒に帰ることになったわたしたち。

歩き始めて住所を言い合ってみれば、なんとご近所さんだった。

今まで会ったことがない方が珍しいんじゃないかと思うほどに家が近くて、二人で笑ってしまう。


「白咲さん、笑えるんじゃん」

「え?」

「いいね、笑った方がやっぱ可愛いよ」

「え、な、え……」

「ははっ、動揺してる」


突然の"可愛い"に、今までとは違う意味で顔が真っ赤に染まる。

そんなこと初めて言われたから、恥ずかしくてたまらない。

なのに、その恥ずかしさの中に緊張は無くて。

いつもみたいなあがり症の顔の赤さじゃない。

でも、その理由はよくわからなかった。

川上くんはいろんな噂がある人なのに、こうやって喋っているとそれが全部嘘みたいに感じる。

言葉は優しいし、わたしの話を急かさず呆れずに聞いてくれるし。

こんな風に一緒に帰っている事実が、信じられない。

一日の中で起きた突然の急展開に、まだついていけていないわたしがいた。