中学生になって初めての夏を迎えたけれど、この地域がこんなに暑いなんて全然知らなかった。

わたしはこの春まで、全く違う場所に住んでいた。

お父さんから転勤と引っ越しの話を聞いたのは小学校六年生の冬。

地元の中学校に進学予定で話を進めていたから、急に決まった引っ越しで大変だった。

全く知らない土地での新生活。

お父さんにはすごく謝られたけど、わたしは正直、すごく嬉しかったのを思い出す。

なんで?と聞かれれば、理由は簡単。

小学校時代、わたしには全然友だちがいなかったんだ。

いじめられていたわけじゃない。だけど緊張するとすぐ顔を真っ赤にしてしまうわたしは、それをからかわれることが多かった。


"タコみたい"

"顔真っ赤じゃん"


多分、他の人が聞いたらそんなこと?って思うようなこと。

だけど、わたしにはそんな言葉たちがトゲみたいに心臓にささってて。

馬鹿にするような笑い声が、酷く目に焼きついてしまった。

気にしないようにすればするほど顔は赤くなるし、もっと笑われたりからかわれたりするし。

そういうことが多くて、次第に一人でいることが多くなった。

当然、学校は全然楽しくなくて。

夏休みや冬休みが終わりに近づくと、毎回熱を出すほどには学校がキライだった。

だから、わたしにとって今回の引っ越しはすごく楽しみで。

もしかしたら自分を変えられるかもしれない。そう思ったら、新生活にわくわくした。

せっかく引っ越して、わたしを知っている人は一人もいない中学にきたんだ。

だからこれからはそんな自分を変えて、友だちをたくさん作りたい。

緊張しないように、自己紹介の練習もたくさんした。

きっと大丈夫。頑張ろう。

そう意気込んで入学したのに。

人の性格なんてそう簡単には変わらないんだなということを知り、今自分自身にすごくショックを受けている。